【弁護士が解説】どこからが残業?残業代が出る時間・出ない時間の境界線

残業した際に、残業代の支払い対象になる時間とならない時間があります。

このコラムでは、どういった時間が対象となるのかを解説します。

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残業代の対象となる時間はどんな時間か

残業代(割増賃金)の対象となる時間は、労働時間です。

そして、労働者の行為が使用者の指揮命令下におかれたものと評価することができる場合に労働時間といえます。

具体的な事例を見ていきましょう。

休憩時間

例えば、店舗のスタッフで、勤務時間中に客がいない時に店舗内で適宜休息をとることはどうでしょうか。

これについて、大阪地方裁判所昭和56年3月24日判決(すし処「杉」事件)は、客が来店した場合には直ちに業務に従事しなければならなかったため、休憩時間とはいえず、手待時間にすぎないから、労働時間に含まれると判断しました。

【結論】店舗内で休憩をとっても、客が来店した時に対応をとる必要がある状態であれば、それは労働時間にあたると考えられます。

仮眠時間

例えば、ビルの管理スタッフが、ビル内で夜間仮眠をしているが、警報が鳴ったり、電話があった場合に、対応をするケースではどうでしょうか。

これについては、最高裁判所が、次のとおり判示しています。

上告人らは,本件仮眠時間中,労働契約に基づく義務として,仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられているのであり,実作業への従事がその必要が生じた場合に限られるとしても,その必要が生じることが皆無に等しいなど実質的に上記のような義務付けがされていないと認めることができるような事情も存しないから,本件仮眠時間は全体として労働からの解放が保障されているとはいえず,労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価することができる。したがって,上告人らは,本件仮眠時間中は不活動仮眠時間も含めて被上告人の指揮命令下に置かれているものであり,本件仮眠時間は労基法上の労働時間に当たるというべきである。

(最高裁判所平成14年2月28日判決)

【結論】仮眠室で仮眠していても、労働からの解放が保障されていないので、仮眠時間は、使用者の指揮命令下に置かれていたものとして、労働時間にあたると考えられます。

着替えや準備は労働時間か?

労働者が、作業を始める前に、作業着、保護具等を着用して、移動するといった準備時間は、労働時間にあたるでしょうか。

これについては、最高裁判所(最高裁平成12年3月9日判決)は、使用者から作業服及び保護具等を装着するよう義務付けられ、右装着を事業所内の所定の更衣所等において行うものとされていたのであるから、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるため、労働時間にあたると判示しました。

【結論】準備時間も労働時間にあたる場合があります。

通勤時間

職場への通勤時間は、使用者の指揮命令下とは考えられないので、通常は、労働時間とは考えられません。

【結論】通勤時間は、労働時間にはあたりません。

研修時間

①業務命令により、研修を受けた場合はどうでしょうか?

業務命令により、研修を受けた場合は、使用者の指揮命令下にありますから、労働時間と考えられます。

【結論】業務命令による研修は、労働時間にあたる。

②業務命令ではないものの、業務との関係が深く、義務性が強い研修はどうでしょうか?

 業務命令がないからといって、業務との関係が深く、義務性が強い研修の場合には、労働時間と考えられます。

【結論】業務との関連性が深く、義務性が強い研修である場合には、労働時間にあたると考えられる。

③全くの任意参加の研修である場合はどうでしょうか?

 任意参加の研修は、指揮命令下にあるとは言えませんので、労働時間ではないといえます。

【結論】任意参加の研修は、労働時間ではない。

まとめ

以上見てきましたように、例えば「休憩」や「準備」といった労働時間ではないと思える時間でも、会社の指揮命令下であれば、労働時間として残業代(割増賃金)の対象となる場合があります。

労働時間が正しく扱われているか、今一度確認してみましょう。

もし労働時間の取り扱いについて疑問がある場合は、専門家へ相談することをおすすめします。

この記事の執筆者

弁護士松村譲(埼玉弁護士会所属)

2009年弁護士登録。埼玉県内法律事務所にてアソシエイト弁護士を経験後2010年はるか法律事務所に入所。労務を含む企業法務全般や一般民事事件の解決に従事。特に労働事件の取り扱い経験が多い。埼玉弁護士会では労働問題対策委員会委員長を務めた。また、2015年から2020年まで駒澤大学法学部非常勤講師を務めた。2019年東証一部上場企業の企業内弁護士となり、企業法務に従事した後、2023年はるか法律事務所に復帰し、現在、個人や企業が抱える法律問題(労働法務その他)等の解決に日々尽力している。

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