企業に求められるパワーハラスメント防止措置
2019年に労働施策総合推進法が改正され、パワーハラスメントの防止措置について事業者の措置義務が規定されました。
中小企業に対しても、令和4年4月から義務化されています。
パワーハラスメントは、従業員を疲弊させ、健康を害するリスクがあります。そして、休職や退職を引き起こすなど重大な結果をもたらす可能性があります。
本記事では、企業に求められているパワーハラスメント防止のための措置について解説します。
パワハラがもたらす企業リスクについての記事:パワーハラスメント
パワーハラスメントとは
労働施策総合推進法では、パワーハラスメント(以下、「パワハラ」といいます。)の定義が明らかになりました。
労働施策総合推進法第30条の2を見ると、「 優越的な関係を背景とした言動であって、 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」であり、 「労働者の就業環境が害される」ものであるものをパワハラと位置づけています。
例えば上司と部下のような指揮命令権や評価権限等による優越的な関係を背景として、業務上必要かつ相当な範囲を超えて、労働者の就業環境を悪化させる場合が該当することになります。
この点、業務上必要性があり、相当な範囲で行う「指導」はパワハラにはあたりません。
※上司が部下に有する優越的地位のみならず、例えば同僚であっても知識や経験、在籍年数等による優越的地位も状況によっては想定できます。
(雇用管理上の措置等)
労働施策総合推進法
第三十条の二 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
パワハラ防止措置義務
労働施策総合推進法では、次のパワハラ防止措置を講じるように求められています。
事業主の方針等の明確化および周知・啓発
①職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
②行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の服務規律を記載する文書に規定し、労働者に周知、啓発すること
文書に規定し、労働者に周知・啓発すること相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
④ 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
職場におけるパワハラに関する事後の迅速かつ適切な対応
⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥ 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
⑦ 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
⑧ 再発防止に向けた措置を講ずること
(事実確認ができなかった場合も含む)
併せて講ずべき措置
⑨ 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
⑩ 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
不利益取扱いの禁止
事業主は、労働者が、職場のパワーハラスメントについての相談をしたこと、事業主によるその相談への対応に協力して事実を述べたことを理由として解雇その他不利益な取扱いをすることが、法律上禁止されています。
(雇用管理上の措置等)
第三十条の二 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。労働施策総合推進法
まとめ
以上のとおり、事業主には、パワーハラスメント防止のための措置をとる義務がありますので、事業を営んでおられる方は要注意です。
この記事の執筆者

弁護士松村譲(埼玉弁護士会所属)
2009年弁護士登録。埼玉県内法律事務所にてアソシエイト弁護士を経験後2010年はるか法律事務所に入所。労務を含む企業法務全般や一般民事事件の解決に従事。特に労働事件の取り扱い経験が多い。埼玉弁護士会では労働問題対策委員会委員長を務めた。また、2015年から2020年まで駒澤大学法学部非常勤講師を務めた。2019年東証一部上場企業の企業内弁護士となり、企業法務に従事した後、2023年はるか法律事務所に復帰し、現在、個人や企業が抱える法律問題(労働法務その他)等の解決に日々尽力している。
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